No.A115
年齢 | 39 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/21 |
剖検年月日 | 1945/09/21 |
被爆距離 | 1500 m |
被爆時地名 | 東白島 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋内で被爆し、家屋倒壊の下敷きになりました。
症状の経過
妊娠8か月でした。
9月10日から四肢、腹部、胸部に多数の点状出血が出現しました。
9月16日から39℃の発熱がありました。
9月19日に腹痛が出現、9月20日に未熟児を出産し、21日に死亡しました。子供は女児でしたが、9月20日に死亡しました。
当時の記録からわかること
栄養状態は不良でした。軽度の脱毛がありました。古い点状出血が上肢にみられました。
心外膜に少数の点状出血が見られました。
胃には多数の点状出血があり、粘膜は蒼白でした。小腸、大腸の粘膜には点状出血があり、様々な大きさの潰瘍も見られました。
子宮は大きく、内腔には暗赤色の血液塊を認めました。
骨髄では赤色髄が大きく減少し、黄色髄が増えていました。
病理組織標本からわかること
肺の肺胞は軽度拡張しています。炎症の所見はありません。
肝臓の小葉中心性変性はありません。グリソン鞘に軽度のリンパ球浸潤が見られます。
脾臓ではリンパ濾胞がみられ、リンパ球の密度は保たれています。
![](img/125-1.png)
粘膜と粘膜下層は壊死しています。
![](img/125-2.png)
多数のアメーバ(→)が認められます。
![](img/125-3.png)
細胞密度は高く、未熟な骨髄球系細胞が増加しています。巨核球(→)もみられます。
まとめ
皮膚の表皮では、メラニンを含む細胞が増加しています。真皮では毛嚢が減少しています。
8ヶ月の未熟児を出産して、およそ2日後の母親であり、児も出生後1日で死亡しています。
大腸では、盲腸から広い範囲の大腸で、粘膜から粘膜下層にかかる潰瘍性病変を多く認めます。これらには、壊死組織中にアメーバが多数認められ、アメーバ性大腸炎と診断されます。
骨髄および脾臓では、造血細胞の減少はみられず、放射線の影響からは回復してきていると考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31