No.A114
年齢 | 78 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/10/13 |
剖検年月日 | 1945/10/13 |
被爆距離 | 2000 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
詳しい記載はありません。
症状の経過
下痢と脱毛がありました。
当時の記録からわかること
栄養状態は不良でした。
やけどや傷はありませんでした。頭髪は軽度の脱毛が見られました。
左の胸腔には約100mlの胸水が、腹腔には約100mlの腹水がたまっていました。心のう内には約30mlの透明な心のう水がたまっていました。胸膜に少数の点状出血がありました。
肺には気腫性変化が見られました。下葉と中葉に中等度のうっ血が見られました。
胃粘膜は蒼白で少数の出血性のびらんが見られました。
子宮には少数の平滑筋腫(いわゆる子宮筋腫)が存在していました。
病理組織標本からわかること
胃にはびらんが形成され、炎症細胞が高度に浸潤しています、粘膜下層には浮腫が見られます。
子宮内膜は腺と間質の萎縮が見られますが、これは年齢相応です。筋層には平滑筋種が見られます。
脾臓のリンパ濾胞は小型ですが、みられます。類洞にはリンパ球が多く見られます。
リンパ節の皮質ではリンパ球の密度は高く、高度の炭粉の沈着が見られます。
まとめ
骨髄は脂肪髄であり造血組織の萎縮が高度ですが、出血傾向はそれほど強くなく、胸膜に点状出血をみるにとどまります。
脾臓などのリンパ組織に萎縮が目立たないことから、放射線による影響は少ないと推測されます。また、脱毛も軽度です。骨髄の変化は加齢の影響もあると思われます。
肝では小葉辺縁性の中等度の脂肪変性がみられます。これは栄養状態が悪いためと思われます。
子宮内膜の萎縮、子宮筋腫などは加齢性変化と思われます。
直接的な死因となる明らかな病変は、標本からは見出せません。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/03/31