No.A113
年齢 | 23 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/05 |
剖検年月日 | 1945/09/05 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町(中国第104部隊) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
北向きの兵舎の、開いた窓から3mの位置で被爆しました。倒壊した兵舎の下敷きとなりましたが自力で抜け出しました。
左大腿に裂傷を、両足にやけどを負いました。
症状の経過
やけどは速やかに治癒しました。左大腿の裂傷部には木の破片が残っており、これは8月末に取り除かれました。
9月2日に腹部の膨満が始まりました。
9月のはじめから死亡日まで高熱が続きました。多数の点状出血がみられました。
当時の記録からわかること
体格はよく、栄養状態も良好でした。いくつかの点状出血が腹部と胸部にみられました。
肺に硬結はみられませんでした。
心外膜下に多くの点状出血が見られました。
肝臓の小葉は明瞭でした。
食道や胃の粘膜には多くの点状出血が見られました。
扁桃腺が腫れていました。
病理組織標本からわかること
心筋細胞内にリポフスチン沈着が目立ちます。
肝臓には軽度の小葉中心性変性があり、一部のグリソン鞘に軽度のリンパ球浸潤が認められます。
脾臓のリンパ濾胞は萎縮しています。髄質のリンパ球は減少しています。
皮膚では真皮の線維化と毛嚢の萎縮が認められます。
まとめ
骨髄では造血細胞の著しい減少がみられます。それによる血小板減少が原因で出血しやすい状態にあり、胸腹部などの皮膚、心外膜、胃粘膜などに点状出血がみられます。
また、扁桃腺などに壊死性変化がみられ、感染しやすい状態であったと推測されます。脾臓とリンパ節などでもリンパ球産生の低下がみられます。これらの変化は放射線の影響と思われます。
肺では、両側とも中等度の急性うっ血がみられ、多巣性に軽度の急性気管支肺炎を伴っています。肺門リンパ節では、乾酪壊死を伴う結核病変を認めます。
両肺の急性うっ血水腫と多巣性の急性気管支肺炎が直接的な死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24