No.A111
年齢 | 33 歳 |
---|---|
性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/15 |
剖検年月日 | 1945/08/15 |
被爆距離 | 700 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋外において被爆しました。
頭部、上半身、両下肢など広範囲にIII度のやけどを負い、似島に搬送されました。
症状の経過
被爆直後からはきけと嘔吐がありました。
翌日から、下痢と発熱が生じました。
当時の記録からわかること
顔面、左後頭部、右上肢、右胸部、腹壁、両下肢に、広い範囲にやけどがみられ、かさぶたで被われていました。これらのやけどの部分からは大量の液がにじみ出ていました。
肺の表面には点状出血が散在していました。
十二指腸では、著しいうっ血と点状出血が見られました。小腸内には3匹の回虫がいました。大腸は広くむくんでおり、粘膜には点状に暗黄茶色の偽膜物質が付着していました。潰瘍はありませんでした。
病理組織標本からわかること
標本は残っていません。以下は当時の記録にある組織所見です。
肺には限局性の無気肺や肺気腫が見られ、細菌塊が細気管支や肺胞内にみられました。
精巣に精子細胞および成熟した精子は少数しかみられませんでした。
皮膚では表皮の一部が壊死しており、多数の未熟な白血球が見られました。
骨髄では細胞密度が高く、左方移動がみられ、成熟白血球は減少していました。多くの巨核球が色々な段階でみられましたが、赤血球産生組織は少量でした。
まとめ
組織標本は残っていないため、当時の記録から推測しました。
骨髄では細胞密度は高く、骨髄球系では未熟な細胞が多く、成熟白血球は少ないとされていますので、感染による影響の可能性が高いと思われます。一方で肺の炎症巣には好中球がみられていますので、放射線による影響は大きくないと考えられます。
肺には壊死を伴う炎症がみられ、大腸には偽膜を形成する炎症がみられ、この、感染症による肺と大腸の急性炎症が直接死因となった可能性が高いと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31