No.A011
年齢 | 58 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/05 |
剖検年月日 | 1945/09/05 |
被爆距離 | 不明 |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋内で被爆しました。
家屋の崩壊で、右肘と頚部にすり傷を負いました。
症状の経過
傷が治った後もだるさが続きました。
9月1日、38℃から39℃の高熱が突然おこり、全身に点状出血が出現しました。
9月3日には咳、発語困難と、下痢がみられました。
当時の記録からわかること
栄養状態は不良でした。
0.3~0.5㎜の大きさの点状出血が皮膚全体に見られました。胸腔には約250mlの血性胸水がたまっていました。右肺は横隔膜に癒着していました。両肺は高度にうっ血しており、出血性肺炎が見られました。
食道や胃、腸管には異常はありませんでした。
大脳にも異常はありませんでした。
病理組織標本からわかること
肝臓には軽度の小葉中心性変性があり、小葉中心と小葉辺縁に胆汁が沈着しています。
脾臓ではリンパ濾胞が消失しており、リンパ球が減少しています。
皮膚では、表皮は肥厚しています。真皮は線維化、毛根の細胞の変性・壊死が見られます。

細菌塊を伴う急性出血性肺炎と、その周囲に急性うっ血水腫が見られます。

遠位尿細管の一部に尿円柱が見られます。一部の血管内に細菌塊が見られます。

脂肪髄が占めており、滲出液貯留を伴います。造血細胞は減少しています。
まとめ
骨髄は低形成であり、造血細胞は著しく減少していることから、好中球減少などによる感染しやすい状態や、血小板減少による出血傾向があったと思われます。これは原爆放射線の影響であり、そのために細菌感染が悪化し、出血性肺炎を起こしたことが死につながったと考えられます。
そのほか、脾臓でのリンパ組織の萎縮やリンパ球産生の低下、皮膚での表皮肥厚や毛根細胞の壊死などの変化も、急性の放射線障害とみなされます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31