No.A109
年齢 | 32 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/08 |
剖検年月日 | 1945/09/08 |
被爆距離 | 900 m |
被爆時地名 | 広瀬元町 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
自宅で被爆し、家の崩壊で軽度の傷を受けました。
症状の経過
被爆の直後は少量の鼻血があったのみで、仕事を続けていました。
8月15日、歯肉から出血がありました。
8月18日に高熱、嘔吐、食欲不振と全身倦怠があり、8月31日に岩国海軍病院へ入院しました。
当時の記録からわかること
体格はよく、栄養状態も良好でした。
全身に様々な大さの点状出血が多数みられました。
心嚢膜や胸膜に点状出血が散見されました。左側の胸腔には約200mlの胸水がたまっていました。
肺には多数の点状出血が見られました。左肺下葉には小結節がありました。右肺は葉間に癒着があり、上葉に1㎝ほどの大きさの石灰化巣がありました。
胃粘膜には多数の点状出血が見られました。十二指腸や大腸はうっ血していました。粘膜には少数の小さな点状出血が散在していました。
病理組織標本からわかること
11枚の標本がありますが、スキャンが可能なのは骨髄のみでした。以下は当時の記録にある組織所見です。
肺実質は壁の薄い肺胞からなり、内腔は空虚で、出血がみられる部分もありました。
脾臓では胚中心が認められず、中心血管に軽度の硝子様変化が見られました。
まとめ
骨髄における造血細胞の減少は高度です。血小板減少による出血傾向として、全身皮膚、胸膜、胃粘膜などに広く点状出血が認められます。この変化は放射線障害と考えます。
右肺上葉に小さな石灰化巣があり、限局性ながら胸膜の線維性癒着をともなうことから、陳旧性結核巣の可能性がありますが、活動性の肺の炎症はないと思われます。
組織の所見や当時の記録から、はっきりとした死因を特定することは困難ですが、骨髄機能低下から、感染症に弱い状態にあったと思われ、発熱の記録もあることから敗血症性ショックであった可能性があります。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/03/31