No.A107
年齢 | 32 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/08/19 |
剖検年月日 | 1945/08/19 |
被爆距離 | 不明 |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
両上肢、両下腿、背面全体にやけどを負いました。
症状の経過
8月14日に西条の傷痍軍人広島療養所へ入院しました。
8月15日の体温は38.7℃、16日は39℃、17日は40℃、18日は39.9℃と高熱が続きました。
当時の記録からわかること
肝臓及び腎臓の肉眼的構造は不鮮明でした。
脳の髄膜は充血していました。点状出血はありませんでした。
胸骨の骨髄は過形成ですが、大半は細網細胞でした。これに加え多数の形質細胞や、幼若なリンパ球が見られました。
病理組織標本からわかること
肝臓の小葉中心部では類洞の拡張が見られますが、うっ血はありません。
卵巣では白体のほかに、原始卵胞が散在性にみられます。
まとめ
骨髄の標本は残っていないため確認はできませんが、当時の記録から、胸骨の骨髄では細胞密度の高い部位があるものの、細網細胞の増殖が主体で骨髄細胞はごく少なく、正常の造血は殆んどみられないと思われます。この、骨髄の異常は放射線によるものと考えられます。
扁桃腺の上皮の一部には壊死がみられ、免疫低下状態にあると推測されます。
その他の病変としては、肺の軽度のうっ血水腫と出血を確認できます。
標本からは直接的な死因となりうる明らかな病変は見出せませんが、感染しやすい状態にあり、実際に高熱が続いていたとの記録より、敗血症であったことが推測されます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24