No.A103
年齢 | 34 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/13 |
剖検年月日 | 1945/08/13 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町(中国第104部隊) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
中国第104部隊の軍人でした。軍施設内の洗面所で洗濯中に被爆しました。
建物の倒壊により右側頭部に何カ所かの挫滅傷と右下腿の内側に打撲を受けました。両肩と背中、上腕にやけどを負い、似島に搬送されました。
症状の経過
食欲不振と出血性ではない下痢がみられました。
8月9日から死亡日まで持続的に39℃の発熱がありました。 はきけや嘔吐、腹痛はありませんでした。
死亡前24時間に意識障害をきたしました。
当時の記録からわかること
背の高い男性で、栄養状態は良好でした。後頭部と肩にII度のやけどがありました。
腹腔内に約200mlの出血が見られました。
左肺には多数の点状出血がみられました。肺に触知できる硬結はありませんでした。下葉の後面の中央には米粒大の結核病変が認められました。気管支血管リンパ節には石灰化巣が見られました。
脾臓には傷がみられ、血液の塊が付着していました。
左横隔膜の下にも凝血がみられました。
脳の後頭葉の一部に出血が見られました。
病理組織標本からわかること
標本は残っていません。以下は当時の記録にある組織所見です。
肺では限局性に無気肺と肺気腫が見られました。
胃や腎臓では死後変化が強く、診断が困難でした。
回腸では、上皮の一部がはがれていました。
精巣では多くの上皮がはがれ、精子は高度に減少しており、少数の精細管のみが成熟した精子細胞をもっていました。精巣上体の腔内には精子はみられませんでした。
まとめ
組織標本は残っていないため、当時の記録から推測しました。
脾臓では被爆時の外傷によると思われる被膜の破綻がみられ、腹腔内には約200mlの出血性腹水が認められました。横隔膜などの出血も外傷によるものと考えられます。
一方、肺では、左肺下葉の結節や左肺門リンパ節の石灰化巣から、古い肺結核巣があるとみなされますが、活動性の肺結核の所見や急性肺炎の所見はありません。
放射線の影響として、脾臓などでのリンパ組織の萎縮と精巣での精子減少があると思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31