No.A101
年齢 | 4 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/23 |
剖検年月日 | 1945/09/23 |
被爆距離 | 2000 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋外に立っていて被爆しました。直ちに母親によって屋内に運ばれました。
症状の経過
被爆後すぐに食欲不振、血性の下痢が始まり、9月20日まで続きました。
8月15日までは吐血もありました。8月6日から12日まで発熱がありました。
9月20日の血液検査では白血球数は5000/μl、赤血球数は300万/μlでした。
当時の記録からわかること
高度の栄養不良状態でした。脱毛はありませんでした。
肝臓は軽度腫大しており、高度なうっ血がみられました。肝門部に腫大したリンパ節が見られました。
腸管内には、液状の茶色の物質が見られました。腸管の粘膜には多数の潰瘍があり、いくつかの部位ではポリープ状でした。これらの変化はとくに下行結腸で顕著でした。
左の扁桃腺は壊死していましたが、腫れてはいませんでした。
病理組織標本からわかること
胸膜に新鮮な出血が見られます。
脾臓には発生したばかりと思われる梗塞と、その周囲に出血が認められます。脾臓のリンパ濾胞は消失していますが、大型のリンパ球が多く見られます。
リンパ節のリンパ濾胞は残存していますが、胚中心はありません。リンパ球は多数認められます。
まとめ
腸管に潰瘍がありますが、再生している様子が見られず、放射線の影響で生じた腸管粘膜の壊死性変化が死亡時まで続いたと思われます。これらの病変では好中球浸潤が乏しく、骨髄での血液細胞産生、成熟過程の障害があったと推測されますが、骨髄の標本は残っていないため確認はできません。
肺にも軽度の気管支肺炎がありますが、同様に好中球浸潤を認めないという特徴がみられます。
肝臓の高度の脂肪変性は、持続的な下痢に伴い栄養状態が不良であったためと思われます。
腸管の潰瘍による下痢、脱水、栄養失調が直接の死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31