No.A100
年齢 | 38 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/11 |
剖検年月日 | 1945/09/11 |
被爆距離 | 1100 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋内で料理をしている時に被爆しました。
家が倒壊して右肩に擦過傷を負いました。
症状の経過
9月3日ごろに脱毛が始まり、体重減少がみられました。
9月5日に発熱、下痢を生じ、のどの痛みがあり、歯肉出血に気が付きました。皮膚には点状出血がみられました。
日付は不明ですが、死亡前に5ヶ月の胎児を流産しました。
当時の記録からわかること
栄養状態は不良でした。皮膚は蒼白で、体全体に点状出血がみられました。頭髪の脱毛が顕著でした。
胸腔は両側とも底面と側面に癒着が見られました。
胃と腸の粘膜は浮腫性で壊死している部分がありました。
大腸のリンパ組織は肥大し、壊死部分がありました。
腎臓にはうっ血がみられ、かなりの出血も伴っていました。腎盂や両側尿管に点状出血が見られました。
子宮の長さは12cmとやや大きく、内膜は血腫の状態でした。
扁桃腺には多巣性に壊死がみられました。
病理組織標本からわかること
腎臓の糸球体に細胞が多く見られますが、硝子化などの異常はありません。
子宮には著しくうっ血した脱落膜の一部がみられます。血管周囲に軽度のリンパ球浸潤が見られます。
卵巣では大型の破裂した成熟卵胞が見られます。他に多くの白体も見られます。
皮膚(部位不明)では毛嚢も脂腺も萎縮しています。
まとめ
骨髄の組織標本はないのですが、歯肉出血や全身の点状出血などから、骨髄の造血細胞の減少があると思われます。扁桃腺の壊死、胃や腸の粘膜壊死は感染に弱い状態にあったことを示唆し、これも骨髄機能低下による好中球減少のためと推測されます。骨髄の変化は放射線の影響と思われます。
時期は不明ですが、妊娠5ヶ月での流産後であり、子宮内膜や卵巣にその名残を認めます。
毛嚢の萎縮による脱毛は放射線の影響と思われます。
胃の潰瘍性病変などからの出血が直接的な死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24