No.A010
年齢 | 8 歳 |
---|---|
性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/16 |
剖検年月日 | 1945/09/16 |
被爆距離 | 500 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
被爆距離のほかに、詳しい記録は残っていません。
症状の経過
被爆当日にはきけ、嘔吐がありました。
8月18日には脱毛がみられました。
8月25日には、発熱と歯肉炎、咽頭炎と皮膚に点状出血が出現しました。また、のどの痛みと下痢もありました。右頬に腫脹と潰瘍がみられました。
当時の記録からわかること
栄養状態は極めて不良でした。頭髪はほぼ完全に脱毛していました。右の口角部には手のひら大の大きな潰瘍があり、右頬まで拡がっていました。
左肺はほぼ全面で胸膜と癒着していました。胸膜下には出血が見られました。石灰化したソラマメ大の硬結が2つ胸膜下にありました。
右肺には癒着はありませんでしたが、表面には多数の点状出血が見られました。
椎骨(背骨)の骨髄では赤色髄が大きく減少し、黄色髄が増えていました。
病理組織標本からわかること
肝細胞は軽度萎縮しています。
腎臓の糸球体・尿細管には異常はありません。
精巣には未熟な精細管に精子の形成はありません(年齢相応)。間質の細胞が増殖しています。
脾臓にリンパ濾胞がみられ、脾髄の細網細胞が増生しています。ヘモジデリン沈着が認められます。
まとめ
左肺ではかなり広い範囲で、急性化膿性気管支肺炎の所見を認めます。肉眼所見では古い結核巣を疑わせる記載がみられますが、組織標本では確認できません。
骨髄は広く過形成であり、とくに骨髄球系の未熟細胞が目立ちます。肺の炎症巣では多形核好中球が多くみられ、成熟抑制は認めません。
急性気管支肺炎による呼吸不全が直接の死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/04/14