No.A001
年齢 | 15 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/17 |
剖検年月日 | 1945/09/17 |
被爆距離 | 1200 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋外で被爆しました。白のシャツとモンペを着ていました。
右肘と右顎にやけどを負いました。
症状の経過
全身倦怠と食欲不振がありました。
8月20日に脱毛が始まりました。
8月28日から発熱がみられ、8月30日には40.7℃に達しました。発熱は死亡時まで続きました。
8月29日の血液検査では、白血球は1900/μl、赤血球は285万/μlと低値でした。
8月31日には白血球数250/μl、赤血球227万/μlとさらに減少していました。
当時の記録からわかること
比較的栄養状態は良好でした。中等度の脱毛がありました。後頭部、右頬、左上腕などに多数の小さな瘻孔があり、膿がでていました。左足の内側に、卵大の潰瘍がありました。
胸膜には多数の点状出血が見られました。肺には様々な大きさの膿瘍が上葉を中心に見られ、多数の点状出血を伴っていました。肺尖部では壊死組織がみられました。
扁桃腺はうっ血性で壊疸の状態でした。膿様の物質が、気管と喉頭の粘膜を被っていました。
左頭頂部では、頭蓋骨の内側に膿が見られました。脳の軟膜上にも膿がたまっていました。
病理組織標本からわかること
胃や小腸、大腸の粘膜固有層には中等度の慢性炎症細胞の浸潤が見られます。
肝臓では門脈域に軽度のリンパ球浸潤が認められます。
腎臓に大きな異常はありません。
副腎の束状帯の細胞に軽度の空胞化が見られます。
まとめ
骨髄標本は高度な脂肪髄であり、造血細胞の高度な減少を示します。この骨髄の変化は放射線の影響と推測されます。血小板減少に伴う出血症状が、点状出血として胸膜や心内膜にみられます。また、好中球減少により易感染状態にあったと推測されますが、そのために肺には多巣性に肺膿瘍の所見があり、脳の髄膜や軟膜にも多発性の膿瘍を認めます。これらの所見から、敗血症状態であったと考えられます。菌の侵入口としては、やけど部位の膿瘍化(瘻孔化)が考えられます。
脾臓やリンパ節でもリンパ球の減少が認められ、これも放射線の影響と思われます。
敗血症性ショックが直接的な死因と考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/03/31